先日、バスに乗っていると3歳くらいの可愛い男の子と父親が乗車してきた。

知りたい盛りの男の子の「あれなにー?」「なんでー?」攻撃に、

父親が一つ一つ丁寧に答えていて微笑ましい光景だった。

ふと周囲を見たら、他の乗客も自分と同じように親子を生暖かく見守っていた。

しかし、男の子の次の発言でほっこり空気が一変し、

突然車内に緊張感が走ることになる。

「ねぇねぇパパ~、あのさ~、なんでちんちんはきちゃないのに、きのうママはパパのちんちんをぺろぺろしてたのー!?」

よりによってバスはアイドリングストップ型であり、

ちょうど信号待ちで車内がシーンとした瞬間の出来事だった。

もはや誰も聞こえなかったふりなどできなかった。
「空気が張り詰める 」

という表現は比喩ではなく事実であると実感した瞬間だった。

と、父親は冷静に「おっ、スカイツリーだ!」

と窓の外のスカイツリーを指差した。

どうやら注意逸らし作戦を遂行するようだった。

男の子は「ほんとだー!!!!」と歓声を上げ、

無事ミッションは成功したようだった。

とたんに車内の空気がほぐれ、思わずため息が漏れた。

しかしそれは束の間の休息に過ぎなかった。

「すかいつりーってなにかちんちんみたいだね」

奴の思考はちんちんから離れてなどいなかったのだ。

強引にちんちんの話題に引き戻した男の子は、

まだ答えをもらえていない質問を再度父親に繰り返したのだった。

再び緊張感に包まれた周囲とは裏腹に、

父親は変わらず冷静だった。

「お!今度は都電荒 川線だ!」と、

タイミング良く近くを通った路面電車に注意を向けた。

これは大成功だった。

男の子は図鑑で見たのと一緒だと大興奮していた。

その様子を見て、もう大丈夫だろうと乗客一同胸をなでおろした。

興奮した男の子は父親に得意気に語っていた。

子「ああいうでんしゃを『ちんちんでんしゃ』っていうんだよ。パパしってたー?」

父「しらなかったよ。よくそんなことしってるね」

子「なんかさー、ちんちんでんしゃって・・・『ちんちん』だってー!ぶふふふふ・・・・・・ねーなんでママはパパのちんちんぺろぺろしてたのー?」

父「今度はそうきたか」

最後の父親の冷静な一言に、

乗客のにーちゃんが吹き出した。

自分も限界だった。

それを合図に車内中 で爆笑が起きた。

殺伐とした都会で起きた奇跡。

妙な連帯感に包まれた、不思議な出来事だった。